俳句を楽しむ(江戸の俳人・俳句の作り方12)
今日は江戸時代の俳人、芭蕉・蕪村・一茶・良寛を取り上げます。
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① 松尾芭蕉は、江戸前期(1644~1694)の俳人。 (芭蕉の句は前回取り上げましたので、今日は省略します) 芭蕉・蕪村・一茶などの俳句とその解説は、「中学入試の俳句と短歌」に詳述されていますので、こちらをクリックください。
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② 与謝蕪村は、江戸中期(1716~1784)の俳人、俳画の創始者であって水墨山水画に俳句をつける、写実的な絵画的な発句を得意としました。 鳥になったような耳をもち、カメラのズームのような目をもって、繊細かつ大胆な句を詠みました。 蕪村の有名な句と、その感動点を下記します。
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菜の花や月は東に日は西に(広~い菜の花畑、春の一日が暮れゆくこうとしている。黄色い海の東の地平には大きな夕月が上り始め、西の空には夕日が没しようとしている。)
朝顔や一輪深き淵の色 (夏の朝での、奥深き色のあざやか)
愁(うれ)ひつつ岡にのぼれば花いばら (春の野原のひらけた様子)
五月雨や大河を前に家二軒 (梅雨の大雨の恐ろしさ)
夏河をこすうれしさよ手にぞうり (盛夏での心地よさ)
春雨やものがたりゆく蓑と傘 (春雨でのいたわるような穏やかさ)
春の海終日(ひねもす)のたりのたりかな (うららかな春の日ののどかさ)
不二ひとつうづみ残して若葉かな (初夏の雄大な光景)
山は暮(く)れて野はたそがれのすすきかな (静かで寂しい秋の夕暮れ)
夕立や草葉(くさば)をつかむむら雀 (初夏の夕立の激しさ)
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句の詳細解説は「中学入試の俳句と短歌」をご参照ください。
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③ 小林一茶は、江戸後期(1763~1828)の俳諧人。幼少期に義母に育てられた家庭環境があって、その自虐的な精神からの句風をはじめとして、風土と共に生きる百姓的なものが多い。 平易かつ素朴な句の運びになっている。 一茶の句を下記します。
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雀の子そこのあけそこのけお馬が通る (のどかな春の日、どこからか舞い下りてきた雀の子が、道の真ん中で遊んでいる。 「向こうからお馬がやって来るよ、危ないよ」
われと来て遊べや親のないすずめ (ひとりぼっちの雀よ、来なさい)
やれ打つなはえが手をする足をする (はえを助けてやってくれ)
やせ蛙負けるな一茶これにあり (蛙の戦いを応援してあげよう)
寝がへりをするぞそこのけきりぎりす (夏の夜、寝返りするからのいてくれ)
名月(めいげつ)をとってくれろと泣く子かな (名月に我が子がいと可愛い)
牛の子が旅に立つなり秋の雨 (秋雨:しめやかに売られていく)
うまさ(そ)うな雪がふうは(わ)りふうは(わ)りと (綿菓子のよう)
すず風や力いっぱいきりぎりす (夏の終わりに良き音色)
ともかくもあなたまかせの年の暮 (阿弥陀如来様のお導きで新年を迎えたい)
鳴く猫に赤ん目をして手毬かな (側の猫にあかんべぇする女の子)
椋鳥(むくどり)と人に呼ばるる寒さかな (椋鳥は田舎者の意味)
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④ 良寛和尚は、江戸時代(1758~1831)の曹洞宗の僧侶、歌人、漢詩人、書家。
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われ喚(よび)て故郷へ行くや夜の雁 (仏道修行僧に帰郷を誘う雁がいる)
裏を見せ表を見せて散る紅葉 (良寛臨終時に貞心尼に言ったとされる言葉)
倒るれば倒るるままの庭の草 (これも晩年病床での句)
散る桜残る桜も散る桜 (これも良寛辞世の句)
新池や蛙とびこむ音もなし (芭蕉の句への返句)
焚くほどは風がもて来る落ち葉かな
青嵐吸い物は白牡丹 (青嵐で白牡丹の花びらがお椀へ)
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<俳句の作り方 12> 俳句上達へのコツ
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① 俳句の観賞:句を理解することよりも、句調の整え方、ことばや仮名づかい、切れ字の使い方などを多く見ること。 分からない句は詠み飛ばす、心に響く句があれば繰り返し詠んで暗誦します。
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② 客観的な表現を使う:「海へと急ぐ」(主観的表現)→「海へと走る」(客観的表現)
「干物を焼きて」(主観的表現)→「干物を反らせて」(客観的表現)
俳句の根源である感動は主観によって起こるもの、従って主観が多くなりますが、そこを言葉でもって客観的に表現すると、詠みやすい句になるのです。
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③ 句材の捕らえ方:花や樹木、景色、建物などの静の句材ではなく、昆虫、動物、乗物、人間など動きのあるもの動の句材のほうが格段に作りやすいのです。 美しい静の景色、例えば山の頂上からの眺望の句のときには、日の出とか入日、雲の変化、麓の里の家、立ち上る煙などを詠むと面白くなります。
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④ 季語の本質を知る:適切な季語を使うことです。 オンライン歳時記「わたしの歳時記」 をクリックしてみてください。 「季節」「生活・行事」「衣・食」などを順次入力していくと、適切な季語を見つけることができます。 その季語の意味、使い方も書かれていますので参考になります。 季語が見つかかったら、それが句に適切であるかチェックしてください。 他の文に憑き過ぎていないか、説明し過ぎにならないかが大切です。
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⑤ 継続は力なり:一日1件俳句を作ることをお勧めします。 毎日の生活にも張りがでてきます、楽しくなることでしょう。 作った俳句を、Excelにでも登録し分類整理ができるようにしておくと便利です。 後で生活への活用もできますし、句の修正・向上もできていきます。 頑張ってやってみてください。